相続人と相続順位
- 2015年06月09日
- 相続・贈与
どんな人が相続人となるのか?
どのような人が相続人になるか、また相続人となった場合にどのくらいの財産を取得することができるかは、民法に規定されています。
民法では被相続人の遺産を当然に引き継ぐものを「相続人」といい、相続人は①血族相続人②配偶者相続人の2つに分けられます。 血族相続人は更に、自然血族(実子など)と法定血族(養子など)に分けられます。
相続人のうち②配偶者相続人については必ず1人しかいないので順位の問題は生じませんが、①血族相続人については、子や孫等の直系卑属、父母や祖父母等の直系尊属、更に被相続人の兄弟姉妹といった人がいるため、どのような順位で相続人となるのかが、問題となります。 そこで民法ではこの順位について定めています。
①血族相続人
第1順位(直系卑属)・・・・・子及びその代襲相続人(孫・ひ孫等)
第2順位(直系尊属)・・・・・父母や祖父母等
第3順位(兄弟姉妹)・・・・・被相続人の兄弟姉妹及びその代襲相続人(被相続人の甥や姪)
②配偶者相続人 配偶者は誰が相続人になっても必ず相続人になることができます。
簡単に言えば、配偶者は必ず相続人、配偶者以外は子供がいれば子供、子供がいなければ被相続人の父母、それもいなければ兄弟姉妹ということになります。
養子について
被相続人の子は第1順位の相続人となりますが、この場合の子には養子も含まれます。
子が他の者の養子になっている場合でも被相続人の子なら相続人になります。
但し、子が他の者の特別養子となった場合には、相続人とはならないので注意が必要です。
例えば、養子が10人いたら、その10人全員が第1順位の相続人ということになります。
しかし相続税の計算では相続人の数が多ければ多いほど有利になってしまうため、多数の者と養子縁組をして、相続税の軽減をされないように養子の数について制限を設けています。
この養子の数の制限は、相続税の計算上、「遺産に係る基礎控除額」、「生命保険金等の非課税」の計算に影響を与えるので注意が必要です。
養子の数の制限
①被相続人に実子がある場合には養子が2人以上いても1人と数える
②被相続人に実子がない場合には養子が3人以上いても2人と数える
この制限により、例えば被相続人の相続人が配偶者、実子1人、養子5人だった場合の「遺産に係る基礎控除額」は
3,000万円×600万円×法定相続人の数(3人)=4,800万円になります。
養子は5人いても、実子がいるので養子は1人と数え、法定相続人の数は配偶者1人、実子1人 、養子1人の3人になり7人にはなりません。
また、この制限はあくまでも相続税の計算上(相続税法上)の制限なので、実際の相続人の範囲や相続分には影響を与えません。上記の例で言えば、実子も養子5人も全員、第1順位の相続人であり相続分も同じです。
但し次の場合には養子であったとしても実子として数えることができます。
①特別養子縁組によって養子となった者
②被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者
③被相続人の配偶者と特別養子縁組による養子となった者で、被相続人とその配偶者との婚姻後に被相続人の養子となった者
④相続人の養子で代襲相続人に地位を兼ねる者
養子が離縁された場合
養子であった者が、離縁された後に養親が死亡した場合には、離縁された元養子は相続人にはなりません。
そのため遺言などにより、遺贈を受けていなければ基本的に相続税の申告義務はありません。
但し、注意が必要なのは、養子であった期間中に、養親から贈与を受け、その贈与について相続時精算課税の適用を受けたいた場合です。相続時精算課税は一度選択すると撤回が不可能なので、養親が死亡した時点で、かつて受けた贈与について申告義務を負うことになります。
代襲相続について
被相続人の子が次の①~③のいずれかに該当し、被相続人に孫がいる場合には、孫が第1順位の相続人となります。これを代襲相続といいます。
①相続の開始以前に死亡している場合
②相続人の欠格事由に該当し相続権を失っている場合(※1)
③相続から廃除され相続権を失っている場合(※2)
※1欠格とは、被相続人を故意に死亡させたり、遺言書を偽造するなどの一定の行為を行った場合に、その行為を行った者から法律上の権利を剥奪することです。
※2廃除とは被相続人を虐待したり、又は著しい非行があるなどの場合に、被相続人が家庭裁判所に請求して相続人から廃除することをいいます。
代襲相続で注意しなければならないのは次の3点です
①第1順位の相続人は子→孫→ひ孫と無条件に親等が下がっていく
②第2順位の直系尊属には代襲という概念はない
③第3順位の兄弟姉妹については代襲は1回限りで甥、姪までとなる
〈具体例〉
父、母、子供A(以前死亡)、子供B、子供Aの子(孫)が2人のケースで父が死亡した場合の相続人は、配偶者である母、子共Aの代襲相続人である孫2人、子供Bの合計4人が相続人となります。
また養子の子が代襲相続人になれるのかという問題もありますがこれについては次のようになります。
①被相続人と養子縁組後に出生した場合・・・・・代襲相続人となる
②被相続人と養子縁組前に出生した場合(養子の連れ子)・・・代襲相続人とならない